水苑 高野公彦歌集から。はじめての短歌、入門。

『水苑』高野公彦歌集 を読む。三首目。P16。

萩咲いてこの世の空気ひえびえと澄みをり二つ胸乳のあはひ

まず読みます。
はぎさいてこのよのくうきひえびえとすみをりふたつむなちのあはひ


萩はくさかんむりに秋と書きますが、秋に咲く花なんですね。万葉集
時代から、萩は歌われてきました。作者はそういう歌を意識して、とい
うか、読者がそういう歌を連想することを計算していると思います。

 秋風は涼しくなりぬ馬並(な)めていざ野に行かな萩の花見に
                       万葉集

萩の花が咲く頃は、秋も涼しくなっているようですが、この高野の歌は
この世の空気がひえびえと澄んでいる、ある女性の胸乳の間も
というんですね。

 この世の空気とか胸乳のあはひと言ったことで、全く新しい秋の歌
になったんですね。この歌も空間のひろがり、時間のひろがりを感じ
させる歌だと思います。