高野公彦歌集 水苑 から。はじめての短歌。 家ごもり心は

『水苑』高野公彦歌集から。二首目の歌は、P16。

家ごもり心は街をさまよひぬ牛蒡の煮ゆる甘き香の中

読んでいきます。
いえごもりこころはまちをさまよいぬごぼうのにゆるあまきかのなか

 歌集『水苑』は、一ページに二首の構成です。

奥さんが、ごぼうを煮ているんですね。甘い香りがしています。
作者は家にこもっているんだけど、心は街のなかをふらふらと
彷徨っていましたというんですね。

 面白い、というか好きですね。こういう歌。

 牛蒡は煮るのに時間がかかりますし、心が街をさまよった時間も
短くはないとしれます。街にはいろんなものがありますが、人によって
その対象は異なることでしょう。

上の句では、抽象的なことを言っているので、下の句で具象的に
歌っています。短歌の常套的な手法です。

上の句とは、五七五で、下の句は七七です。上句、下句(じょうく、
げく)とは、言いません。