俗の名もちて生きをり酒のみて 高野公彦歌集『水苑』を読む。

高野公彦歌集『水苑』を読む。今回は、「紅にあそぶ」の
P.31の一首目です。

 俗の名もちて生きをり酒のみて海鼠酢食へり死は
酢の匂ひ

俗には、「このよ」、海鼠酢には、「なまこす」とよみが
ついています。

読んでいきます。
このよのなもちていきをりさけのみてなまこすくへり
しはすのにほひ

俗名は、ぞくみょうと読み、お坊さんがつけてくれる戒名に
対するもので、普通使っている名前のことですね。この俗名を
作者は、俗の名と言っているわけです。

一般の人は戒名は死んだときにつけてもらいますから、俗の名と
いったときに、死を連想させるものとなっています。酒を飲み、
おいしい海鼠酢を食べているが、酢のにおいに死を連想すると

いうか、感じているのですね。阪神神戸の大震災のころ、作者
は、人と酒を飲みながらも、震災で被害にあった方、亡くなった
方を思っていたのではないでしょうか。