高野公彦歌集『水苑』を読む。ハツ、ネギを食らひて酒を飲みゐたり。
高野公彦歌集『水苑』を読む。今回は、 P29。「紅にあそぶ」の
三首目です。
ハツ、ネギを食らひて酒を飲みゐたり五十代多欲にて
生きゆかむ
読んでいきます。
ハツ、ネギをくらひてさけをのみゐたりごじゅうだいたよく
にていきゆかむ
まじめな高野さんだから、遊ぶといっても友人たちと酒を飲む
ことくらいが、せいぜいであとは芸術や芸能、文学などに関する
遊びしかやっておられないと思うのですが。
多欲にて生きていこうというのは、もともとは、作者にとって
文学や芸術への欲求だと思われます。
ハツ、ネギときましたから、焼き鳥屋か焼肉屋で酒を飲んで
いるんですね、で、五十代は多欲にて生きていこうと
飲んで遊んでいることへの合理化、あるいは照れを
感じさせる思いを述べているんですね。やはり、作者には
飲んで遊ぶことへのどこか後ろめたい気持ちがあるのでしょ
う。