飲む友あらな 高野公彦歌集『水苑』を読む。
今回は、高野公彦歌集『水苑』の
薄やうの雲
の続きです。P.24の1首。
湯に割つてスコッチ飲めばわが眼鏡くもる寂しさや 飲む
友あらな
読んでいきます。
ゆにわつてスコッチのめばわがめがねくもるさびしさや の
むともあらな
あらなは、ありの未然形あらと終助詞なの組み合わせです。
なは、自己の意志・希望を表す、と辞書にあります。ゆえに、
飲む友あらなは、飲みともだちが欲しいなというような意味
になります。寂しいは、さみしいとも読みますが、
「さみしい」の方は、主観性・情緒性が強く、などという説明
が辞書にもあります。作者はさみしさやと読んで欲しいと思っ
ているのかもしれません。眼鏡くもる寂しさというのは
初老に入った寂しさというのを表していると思います。眼鏡は
老眼鏡ですね。酒をのむときにも眼鏡をかけるのが習慣となっ
ている、あるいはかけずにはいられない、というところにも
軽い詠嘆があるんではないでしょうか。
「眼鏡くもる」で、具体的にイメージできますので、うまい表現
だと思います。
今回で薄やうの雲は、終わりです。次回からは、「鳥の影」に
入ります。