わだつみのいろこの宮にほとりして 高野公彦歌集 『水苑』

高野公彦歌集 『水苑』 を読む。
今回は、P18.二首目です。

わだつみのいろこの宮にほとりして原発はあり人居らぬ白

読んでいきます。
わだつみのいろこのみやにほとりしてげんぱつはありひとをらぬしろ

この宮というのは富岡町諏訪神社かもしれません。富岡町といった
ら、今ではその名を知らない人はいないところになりました。


高野公彦の歌 短歌研究五月号から 津波を歌う。の項で触れましたが
五月号の原発の歌には

半枕螢子氏へ とありました。半枕氏は福島 「富岡町夜の森」に住
まれていましたので、調べてみました。富岡町のみなさんは、郡山に
避難されているということです。

高野は昔から原発を歌っていました。

わだつみは海ですから、海のいろがこの宮にほとりしてというのです
ね。雪が降って真っ白ななかにだれもいない原発がある。といってい
ます。海がほとりすでなくて、海のいろがというのがいいですね。


これも冬の歌でした。


ほとるは辞書によると
〔「熱(ほとお)る」の転〕熱くなる。熱を発する。また、病気など
で体が熱くなる。ほてる。

とありますが、
ほとりは、川のほとり、とか海のほとりの
ほとりで、ほとりす はその動詞化したものです。


  7月1日追記。
『わだつみのいろこの宮』は、青木繁の作品名でもありました。
これは、「古事記」の綿津見の宮の物語を題材としたものです。
この作品名を意識して使ったということなんですね。